2007.02.04 Sunday

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2006.11.12 Sunday

第28話「古き教会」

image
上の画像は今回出てくるリリス教会のモデル、聖ゲオルグ教会の写真。
ドイツの教会の中でも最も古いものの一つです。
今回からようやく音楽がでてきますので、聴きたい方はどうぞ^^

サルミール司祭はユタの返事を聞くと満面の笑みをたたえた。
今にも顔が破れそうだ。
「そうですか!突然の申し出なのに快くお受けしていただき、ありがとうございます!」
「いえ、私も興味がありましたので」
「では、5日後にまた会いましょう」
そういうとサルミール司祭は足取りも軽く怪物の中へと消えていった。
「では、私も志願者の詳細を見ないといけませんのでこれで失礼いたします」
トッド司教も軽く一礼してから去っていく。
ヴィオリーネはというと、ちらりとユタを見やってから怪物の中へは入らずに裏庭のほうへ走っていった。
失礼します、も言わないなんてシスターにしてはなんとなく礼儀がなってないな、とシュトラウルは一瞬思った。
後に残ったのはいつもの仲間と…双子の弟、ヴァルツ。
「行かないのか?司祭たちと一緒に」
「行きませんよ。あの方達とは挨拶のために一緒にいただけですし、私はこの大聖堂に宿をとっているわけではありませんので」
「あいつらにヴァルトの音楽家達が落ちぶれたことを知られたくないからだろう、ヴァルツ?」
急にユタが横から口を挟んだ。ヴァルツの目が一瞬だけだが、大きく見開いた。
「………」
「何も言わないってことは、図星か」
「どういうことですか?」
事態がよくわかっていないイナホが無邪気に尋ねる。
「さっきの狸じじいたちは貴族と一緒でね。地位や名誉を人一倍大切にするおえらい連中なのさ。そんな連中がいまやヴァルトを追放されている身の俺達のことを『音楽界の頂点に君臨する』なんていうわけないだろう?連中は俺達が追放身分なことを知らないのさ」
「でもここはゴルドのすぐ隣ですよ?そんなにお金に汚い人たちなら、商人から情報を得ているんじゃ…」
「商人っていうのは自分に関係ないことや自分の損になることは言わない人のことを言うんだよ、ビース君」
ユタはさらりとイナホたちの質問をかわすと、ヴァルツに向き直った。
「さっきモーガンがどうのって言ってたけど、ヴァルトの音楽家の追放騒ぎを秘密にしておけって言ったのはモーガンだな?」
「…なんでもお見通しですね。ええ、そうですよ。モーガン様がそう仰りました」
「どうせ本当のことがばれるのは時間の問題じゃないか」
「だからですよ。もう皆ヴァルトに戻る気なんてさらさらないんです。ヴァルトの宮廷音楽家達は新たな演奏場所を探しだしている。…まさか、シュトラウル。あなたはヴァルトに戻る気でいたんですか?」
思いがけないヴァルツの考えにシュトラウルはどきっとした。
皆ヴァルトに戻る気はないだって?
「そのうちリアス王子が戴冠して王になるのもそう遠い未来ではないでしょう。正直あのリアス王子が立派に行政をやっていけるとは考えにくいですし。音楽家達はそれぞれの貴族と相談して、もっと安定した場所に落ち着くことに決めたのがほとんどです。一年後の召集にも出る気でいる物好きがいるとは思いませんでしたが」
口元に手をあててふっと微笑む。完全にこちらを馬鹿にしている顔つきだ。
「でも君はヴァイオリニストだろう?大聖堂ではオルガンとコーラスが主体じゃないか」
ユタが言ってもヴァルツは余裕の笑みを崩さない。
「私がここに就くと誰が言いました?ここには単なる『挨拶』で来たとさっきも言ったでしょう。審査員はそのついでですよ」
そう言いながらヴァルツはすたすたと去っていく。
「じゃあ、また5日後」
不適に微笑みながらヴァルツは木枯らしが吹きすさぶ街の中へと消えていった。

ヴァルトに戻る気はない…皆本当にそう思っているのだろうか?
シュトラウルの頭にふっとレモンライトの顔が浮かんだ。
帰りを待っていると言っていたレモンライト。ネコのクーを抱いて微笑んでいる。
自分は…きっと戻る。ヴァルトに。
シュトラウルがそう考えていると、やれやれといったようにユタが首を回した。
「変な連中に会ったせいで疲れたな」
「ほんとだよー…」
イナホもうなだれる。
「じゃあ、本来行くべき場所に行くとするか」
「?」
「ついてきな」
ユタは一刻も早く怪物大聖堂の中から離れたいと思っているのか早足で裏庭へと進んでいく。
裏庭に何かあるのだろうか。
そうシュトラウルが思ったときだ。裏庭へ続く狭い通路を抜けると視界がぱっと広がって、こぢんまりした古い教会が建っていたのだ。
白い壁がはがれているとても古い教会。
教会の庭では子供達がきゃあきゃあはしゃぎながら遊んでいる。
そして教会の中からはオルガンの音が聞こえてきた。



「『主よ人の望みの喜びよ』か…。誰が弾いているんだろう?」
シュトラウルの言葉にユタがふっと微笑んだ。

【つづく】

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しゃちほこ | 小説「人形たちの交響曲」 | 13:07 | comments(9) | -

2007.02.04 Sunday

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コメント

最近更新早いですね!
でも風邪を引いてしまったとか…(ブログ見ました…)
わざわざ更新して下さって、有難うございます…!
無理なさらずに、ゆっくり休んで下さいね…?

途中ユンタくんが難しそうなこと話していて…。
ヴァルツくんを「………」にさせちゃうだなんて。
彼すごいですね…。私もああなりたいですよ…(遠い目)

ヴァルツくんの不適な笑みが…彼、黒笑多いですね^^;
ここは単なる挨拶だーなんて、審査はついでだーなんて…。
そんな事、本当は思ってないんですよね…?(何)

>そして教会の中からはオルガンの音が聞こえてきた。
まさか・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!

ユタがふっと微笑んだ!?知り合いとか…だったんですか?
というかその前に、誰が弾いてるのでしょうか…!
本当続きが気になります…!(急かすな)
オルガンを弾いているのが…であることを願います!(え?)


小瓶 | 2006/11/12 2:25 PM

お久しぶりですが、おはようございます。
貴族、貧民と来て、ヒエラルキーにのっとっていくと教会は世界観においてはずせない場所ですよね。
またまた大変なことが起こりそうな感じが漂いまくっていますが、がんばれ!シュトラウル君!でも今回はおいしいところはユンタ君に持っていかれちゃいそう(笑
添付自由自在は、ジュゲムいいところですよね!大活用ですね(笑
それではこの辺で失礼します^^ノシ
お体にお気をつけて〜

朱魚 | 2006/11/14 5:49 AM

第28話拝読しました!
今回のMVPは間違いなくユンタ様ですね!
あのヴァルツ君を沈黙させるとは…!
頭の良い人同士の腹の探り合いは
見ていてハラハラものです…。
そう言えばヴァルトに戻ることを前提に
旅をしているメンバーばかりだったので
考えもしませんでしたが、言われてみれば
帰る気無い人がいても(ていうかそっちが大多数)
不思議じゃないですよね。
自分をあんな風に追い出した人の所に
何も好き好んで帰る訳じゃないですし。
シュトラウル君だってあの王子様の事とか
ぶっちゃけどうでもいいとおm(強制終了)

オルガニストの正体は次回に持ち越し…ですね。

私信
流行の波に乗って(?)私も風邪を引きました。
お見舞いに来て頂いたようで、嬉しかったです。
翠の面倒を見てもらって、有難うございました!
お手数おかけしました(汗)。

行雲 | 2006/11/14 9:56 PM

 こんばんは。今回から音楽付きですかw
 曲は知っていても、やはり再生できると、雰囲気でますね^^。オルガン、特にパイプオルガンの音色が好きです、小学生の時は学校のオルガンで、やたらと『アーメン』の音色を弾いていた記憶があります^^;

 次からは、素敵な出会いもありそうですね^^。オルガン弾いていたのは誰かしら?
 楽団解散しちまったらてぇへんだなぁ(笑)。これしきの事で解散する様な団結力だから、女王様は楽団メンバーを修業(?)させたのにな〜、と思ってみたり・・・あれ?違う?(笑)。
 いつか、本当に楽団が本物の団結力で、本物の演奏が出来る日が来るといいなぁw

 コメント遅くなりまして、申し訳ない;;風邪をひき、鼻詰まりで意識が混濁している状態です^^;
 酸素不足・・・。

炎瑠 | 2006/11/15 10:46 PM

 連カキ失礼致します;
 鼻詰まりでぼんやりしてしまいまして・・・ご存じだとは思いますが、↑は私です^^;
 つい、チーム名で書いてしまって・・・すみません―っ!!>_<;

陽 | 2006/11/15 10:51 PM

>小瓶さん

>無理なさらずに、ゆっくり休んで下さいね…?
無理したせいで、しばらく更新お休み状態になってしまいましたorz
こういう場合、おとなしく寝てから更新したほうが結果的に早いということを改めて思い知らされました;

>ユンタくん
>彼すごいですね…
一応旅の仲間の中で一番賢いのがユンタという設定です^^
シュトラウルも勘が鋭く洞察力に優れているのですが、精神的に弱いため自分の先入観に基づいて判断してしまうことがありますので。

>ヴァルツくんの不適な笑みが…彼、黒笑多いですね^^;
しかも実は美人さん設定です。これ、登場人物紹介ページに絵を描いたらおそらく一番人気になるでしょう(ぁ

>まさか・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!
^^;

しゃちほこ | 2006/11/18 1:19 AM

>朱魚さん

>お久しぶりですが、おはようございます
お久しぶりです^^ 勉強が忙しい中、私なんかの小説を読みにきてくださるなんて…!
感激でございますww

>今回はおいしいところはユンタ君に持っていかれちゃいそう(笑
お察しの通り、今回はシュトラウルというよりユタが主役っぽくなりそうです^^;
主役がどっちかわかんない、なんてことを防ぐために頑張りますが;

>添付自由自在は、ジュゲムいいところですよね!
JUGEMに移転して良かった!と今回心の底から思いました。

余談ですが、1月のお正月三が日を終えたら本館の「笛吹き小人」は受験生応援モードにサイト改装いたします^^
ビースやヴィオ共々、全国の受験生を応援しておりますので、頑張ってくださいねw

しゃちほこ | 2006/11/18 1:25 AM

>行雲さん

>ユンタ様
>あのヴァルツ君を沈黙させるとは…!
ユタにぴたりぴたりと考えてることを言い当てられて、流石のヴァルツも黙りました^^;
その後に開き直ってますがね;

>そう言えば…
今までシュトラウルたち中心に話を進めていきましたので、他の音楽家達はどうなのかを展開させました。
次の第5章からどんどん話が箱の展開図のようにパタパタと広がっていく…はずです(ぇ

>シュトラウル君だってあの王子様の事とか
ぶっちゃけどうでもいいとおm(強制終了)
シュトラウルはレモンライト嬢のことを重視して考えていましたので、ぶっちゃけ王子はほんとにどうでもいいんです^^;
ですが、あくまでも今のヴァルトの最高権力者はリアス王子なので、彼抜きに考えることは不可能になってきます。

>私信
いえいえ、私も翠跳君にご飯をあげられてウハウハでしたのでw(何だコイツ
風邪、治ったとのことで良かったです^^

しゃちほこ | 2006/11/18 1:34 AM

>陽さん

>オルガン、特にパイプオルガンの音色が好きです
ピアノが清涼感のある透き通った音色とすれば、オルガンは厚みのある暖かい音色といった感じですよね^^
特にパイプオルガンは音に重量感が出ますので、神聖な雰囲気や荘厳さが加わりますw
本当は18世紀ぐらいでしたらリリス教会のような小さな教会はチェンバロぐらいしかないのですが、そこはある程度ご容赦願います^^;

>これしきの事で…
まさに陽さんの言うとおりなのですが、理解できてない音楽家or貴族が多いということです。
現実問題でも戒めるために罰則を加えたのに、逆ギレして離れていく輩が多いでしょう?(しかも残念ながら子供より大人に多い;)

>風邪
瑤△蕕蕁大丈夫ですか?;
お大事になさってくださいね〜。私みたいに無理すると悪化しますので^^;

追伸:HN「炎瑠」でも陽さんだとわかりましたよ^^
チームのHPはかなり覗いていますのでw

しゃちほこ | 2006/11/18 1:44 AM

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