2007.02.04 Sunday

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2006.11.06 Monday

第27話「オルガニスト選抜」

giroro00.jpg
2日連続で消失した「人形」第27話ですorz
これ以上書くと愚痴ばっかりになりそうなので、うだうだ言わずにいきます…;

老人はユタが迷惑そうな顔をしているのに気づいていないのか、それとも気づいているのに無視しているのか、ともかくべらべらと喋りだした。
「ヴァルツ殿に加えて、ヴァルト宮廷オルガニストのユンタ殿まで来てくださるなんて、いやいや、今日は本当に素晴らしい日でございますなあ!」
「シュトラウルもいるんですが」
ユタがぼそっと言うと、老人はくるりと向き直ってシュトラウルのそばまでつかつかと来ると満面の笑みをたたえた。
「なんと、シュトラウル=ホッフェン殿でございますか!?あのトップヴァイオリニストの?」
「ええ、まあ…」
「これはこれは、いやはや、たった数時間で音楽界の頂点に君臨するほどの方に3人も出会えるとは!今日は宴でも開かないといけませんなあ!」
そういいながら、老人はぎゅっとシュトラウルの手を掴んで無理やり上下に振って握手をしてきた。
エレストールの強引さと違って、この老人の強引さには何かしら嫌悪感が付きまとった。
シュトラウルはさりげなく老人の手を振りほどいて言った。
「あの、失礼ですが、あなたは?」
「いやいや、名前も名乗らずにすまなかったねえ。私はサルミール=バンク。この大聖堂の大司祭をやっている身でねえ」
「大司祭!?」
横にいたビースがもろに驚きの声をあげる。
「おや、意外かね?小間使いの少年」
「いえ、そんなつもりじゃないですよ」
嘘がつけないビースは表情でそんなつもりだったと語ってしまっているが、すかさず若い男性が間に入った。
「私もまだ名乗っていませんでしたね。トッド=アンゲルと申します」
「アンゲルさんも司祭なんですか?」
イナホが訊くとトッドはとんでもないというように首を振った。
「まさか。私はただの司教ですよ」
「司教でも十分素晴らしいではないですか」
ヴァルツが言うとトッド司教はにっと笑った。
「それはどうも」
このギスギスした感じ。
シュトラウルは首都にいたころの貴族達とのやりとりを思い出していた。

レモンライトに連れられて行った音楽家と貴族との集まりで、大勢の貴族と会話したことがある。
そのときに感じたのが、皆の笑顔がどれも何か作られたものであることだった。
お互いの演奏技術や服や家や装飾品を褒めるその顔はどれも皆笑顔なのだけれど、心からの笑顔ではない。人工物、とでもいえばいいのだろうか。
どんなに精巧に作られた仮面でもそれはやはり仮面なのであって、本物ではない。
それが微妙な違和感を生み、その違和感が全体に漂っているからギスギスした空気になっていた。

今の状況もまさにそれだ。
サルミール大司祭もトッド司教もヴァルツもユタも、そしてシュトラウル自身も「建前」という仮面に縛り付けられている。
これじゃあ、首都にいた頃と変わりないじゃないか。
シュトラウルがぐっと唇を噛んだときに、また怪物の口がギギーと音をたてて開いた。
今度口から出てきたのはイナホよりも小さい女の子だった。
シスターの法衣を着ているところを見ると、この大聖堂のシスターなのだろう。
丸い栗色の瞳はどことなく怒りの感情を表していて、勝気そうな印象だ。
その女の子はまっすぐにトッド司教のもとへ来ると、とん、と軽く足を鳴らして言った。
「司教様!いつまでこんなところにいるんですか?オルガニスト希望者の経歴を書いた紙、司教様が見てくれないと!」
「ああ、すみませんね、ヴィオリーネ。ですが私も今審査員の方々とお話していたところだったんですよ」
「審査員?」
ヴィオリーネと呼ばれたシスターが疑わしげにシュトラウルたちを眺める。
「審査員って?」
ユタが何か汚いものでも見るような眼でサルミール大司祭に訊いたが、相変わらず大司祭は気づいていない。
「いやね、ユンタ殿。このたび我が大聖堂で新しいオルガニストを募ることにしたのだよ。今のオルガニストがもうそろそろ高齢でね。引退しなくてはいけなくなったんだ」
「シスターに演奏させればいいんじゃないですか?」
「いやいや、お嬢さん。仮にもこのアローガント大聖堂は由緒ある大聖堂でね。周りの大聖堂を束ねる存在なのだよ。そんな権威ある大聖堂のオルガニストが、司祭や司教の手伝いをするシスターでは目も当てられない」
「そうかなあ…」
イナホが腑に落ちないというようにサルミール大司祭を見たが、大司祭はそれを事もなげにスルーした。
「なので、5日後に行われるオルガニスト選抜の審査員をユンタ殿とシュトラウル殿にやっていただきたいのですよ」
「え!?」
「お二人とも音楽がどういうものかわかっていらっしゃる。特にユンタ殿はヴァルトの専属オルガニストだ。シュトラウル殿も兄弟仲良く審査していただけるとありがたい」
「兄弟仲良く?」
シュトラウルがヴァルツを見ると、ヴァルツはふっと小ばかにしたような笑みを浮かべた。
「私も審査員の一人なんですよ。モーガン様に言われてここの審査員をやることになったんです」
「モーガンに?」
ということは、やはりこのサルミール大司祭たちも権力主義のもとに動いているということだ。
お断りします、とシュトラウルが言いかけたときだった。
「わかりました。俺もシュトラウルもその話、お引き受けします」
きっぱりと言い切るユタの顔からは、ビースと違って何を考えているのか全く読み取れなかった。

【つづく】

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しゃちほこ | 小説「人形たちの交響曲」 | 16:00 | comments(8) | -

2007.02.04 Sunday

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コメント

何だかユンタ君が何を考えているか分からない状況になってきましたね。
これから何が起こっていくのか楽しみです^^

話は変わりまして私もブログの方にハーボットを設置してみました。
良かったらルド君と仲良くさせて頂きたいなと思い、勝手にリンクカード押しつけさせて頂いちゃいました(苦笑)
いらんわと思ったら突き返してくださって良いので、もし良ければ仲良くしてあげてください><

nash | 2006/11/07 5:32 PM

 こんにちは、またお邪魔します^^。
 いや〜、形式主義も時としては恐ろしいですねぇ;大司祭様、裏の顔が現れたら怖そうです^^;
 一方ユンタ君には何か策略がありそうですね(笑)。ヴァルツ君は彼なりに何か密かにやっていそうですし(謎)。様々な人の考えが交錯する場面ほど、どきどきするものはないです(ニヤ)。


 さて、遅ればせながら自分の方もなんとか1pアップできました^^;お時間の空いた時に覗いてやって下さいませ〜。

陽 | 2006/11/08 6:26 PM

更新お疲れ様です!

来た瞬間、タイトルの所に

「オルガニスト選抜」
物凄いドキッとしました…!

菜乃葉…大丈夫なのか…;

審査員の、方々が…すごい人達ばかりで…;;
何人くらい、募集するんですか…?
試験(?)内容とかは…?
あぁ何だかいちいちうるさくてスミマセン…;

ゆ、ユンタくん…何考えてるのでしょうか…。
全く読み取れなかったというところが怖い、です…。
悪いことではないですよね。

ヴィオリーネちゃん…可愛い…!
ボクっ娘結構好きですよ
これから菜乃葉がお世話になります。
じゃんじゃん苛めてやって下さい(酷)

それでは乱文失礼しました。

小瓶 | 2006/11/08 9:48 PM

第27話拝読しました!
ヴィオリーネ嬢ご登場!彼女もオルガン奏者なんですね。
名前からするとヴァイオリンも弾けそうですが(笑)。
でもビース君との関わりが無さそうなのがちょっと残念…。
(↑当然)

特に気にする所じゃないかもしれないのですが、
バンク司祭がビース君を『小間使いの少年』と呼んでらしたのが…
上から目線?と、ちょっと気になったり。

そしてこの人は空気を読めていないのか、
それとも解った上でなのか、この状況で『兄弟仲良く』って…。

行雲 | 2006/11/08 11:16 PM

>nashさん
返信が遅くなってしまい、すいませんです;

>ハーボット
>良かったらルド君と仲良くさせて頂きたいなと思い、勝手にリンクカード押しつけさせて頂いちゃいました
きゃーwありがとうございますw
ルドには今までお友達いなかったので、嬉しい限りです^^*
というか、nashさんのハーボットの名前がめっちゃかわいいです!
夜君と対になっているのかな…?と一人で想像してしまいました^^

しゃちほこ | 2006/11/10 3:51 PM

>陽さん

>大司祭様、裏の顔が現れたら怖そうです^^;
「食えない狸」のイメージがぴったりなキャラなので^^;
案外こういうキャラ書くの好きだったりします。

>様々な人の考えが交錯する場面ほど、どきどきするものはないです(ニヤ)
第4章は色んな人物のいろんな考えがあわさる章ですのでw
その中でシュトラウルが何を見極めていくのかがうまく伝わればいいなあと思っています。

>さて、遅ればせながら自分の方もなんとか1pアップできました^^;
早速読みにいきましたよ〜w
寝る直前だったので感想は書けませんでしたが、また後でお邪魔したときにカキコしておきますね^^

しゃちほこ | 2006/11/10 3:56 PM

>小瓶さん

>菜乃葉…大丈夫なのか…;
なかなか風当たりがつらい位置にいますが、菜乃葉君の性格が大事になってきます。
というか、菜乃葉君の登場で話の流れが第5章、第6章とつながっていきますので結構重要な役ですよ^^v

>審査
詳細は次の話でヴィオが説明してくれますので大丈夫ですよ〜w

>ゆ、ユンタくん…何考えてるのでしょうか…
少なくともユンタは菜乃葉君の味方ですのでご安心くださいませ^^*

>ヴィオリーネちゃん…可愛い…!
うは、ありがとうございますw
毒舌娘なので菜乃葉君に色々きついことをいってしまうかと思いますが、ご勘弁を…!

しゃちほこ | 2006/11/10 4:03 PM

>行雲さん

>ヴィオ
>名前からするとヴァイオリンも弾けそうですが(笑)
ヴィオのスペルはViolineでドイツ語読みをすると「ヴィオリーネ」。
まんまヴァイオリンです^^;ちなみにヴィオの名付け親は私の兄だったりします。

>ビース君との関わりが無さそうなのがちょっと残念…
実はヴィオはすんごいブラコンなんですよ;
なので兄妹設定にしたら、一気にこの章がギャグになってしまいますので見送りました;
どうもすいませんですorz

>バンク司祭がビース君を『小間使いの少年』と呼んでらしたのが…上から目線?と、ちょっと気になったり
またまたビンゴでございますw
バンク司祭のこの態度がけっこう重要だったり。地味に伏線です。

>この状況で『兄弟仲良く』って…
直前で明らかに喧嘩してましたしね^^;
ちなみに理由は後者のほうですw

しゃちほこ | 2006/11/10 4:11 PM

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