2007.02.04 Sunday

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

スポンサードリンク | - | | - | -

<< 短編「やおよろず」 ロッピキメ | main | 第27話「オルガニスト選抜」 >>

2006.11.04 Saturday

第26話「宗教都市」

紅葉
大変お待たせいたしました^^;
「人形達の交響曲」の続きです。
今日は他にも2つほどアップしようかと思っていますので、頑張っていこうと思いますw
というか、登場人物紹介のところに3名ほど入れ忘れてしまった;
ではでは続きからどうぞ〜。



馬車に揺られること8時間。本当に遠い街だと16時間は揺られるのが普通だから、まだキルヒェドムとゴルドは近いほうなのかもしれない。
10月の風はどことなく冷たく、横でイナホがぶるっと身震いをした。
だが冷たいのは何も風のせいだけではないような気がする。
宗教都市キルヒェドムはとても美しい街だった。
街のいたるところに聖者や神、天使の聖像が建っていてその彫刻技術はシュトラウルのような素人でもはっとするほど素晴らしかった。
家々の柱や壁にも荘厳なレリーフが施されていて、まるで家そのものが芸術品のようだ。
だが…なんというか…。
「生活感がない街でしょ?」
シュトラウルのそんな気持ちを汲み取ったかのようにユタが話しかけてきた。
「え?」
「俺も最初ここの街に来たとき思ったよ。なんていうか街全体がひとつの大きな美術館のような気がするんだ。一つ一つはすごく綺麗なんだけど、その代わりに人々が実際に生活している様子が感じられない」
「確かにそうだな…。でも」
「でも?」
「でも、宗教自体がそんなものじゃないのか。愛とか希望とか色々言っているけどどれもピンと来ないよ。宗教で説いていることは、皆人々の暮らしとかはそっちのけでどこか高いところで偉い連中が話しているだけのような感じがするんだ」
「…シュトラウルは無神論者なの?」
「そうじゃないけど。でも神様とか言われてもしっくり来ないってだけ」
それを聞くとユタは何故か皮肉めいた笑い方をした。
「じゃあ、シュトラウルはこの街で色んなことを学べると思うよ。嫌になるほどに人間らしさを、はっとするほど神々しさをね」
「ユタ?」
何かを確信しているかのようなユタにシュトラウルはなんだかいつもと違う彼を感じた。
ユタもユタでそれ以上何も話そうとしなかった。

巡礼用の宿に馬車を預けてから、シュトラウルたちはキルヒェドムを探索することにした。
街を歩くのは皆巡礼か僧侶達で、商人ばかり歩いていたゴルドとは大違いだ。
僧侶達は青や紫、緑の帽子を被っていてどの帽子にも黒い十字架が書かれている。
おそろいのローブがなんとなく暖かそうで、シュトラウルはついつい彼らに目がいった。
「別についてこなくたっていいんだよ、ビース」
「酷いこと言うんですね!僕だってたまには皆さんと一緒に行動したいですよ」
「そうだよ!ねー、ビースさん」
イナホがビースににこっと笑いかける。
「でも明日にはもう次の街に進むのになんでまた探索なんかするんですか?」
「提案したのは僕じゃなくてユタなんだから、ユタに訊けよ。なあ、ユタ?」
シュトラウルがユタに話しかけても、何の反応もなかった。
ただ黙って進行方向を見つめているだけのユタの服を、イナホがぐいっと引っ張った。
「ユタさん!」
「…あ、何?」
「何じゃないよ!何でキルヒェドム探索することにしたの?」
「ああ…」
そういうと突然ユタはぴたりと足を止めて、まっすぐ前を指差した。
「あれだよ」
「あれって…」
進行方向の先にはとてつもなく大きな大聖堂がまるで魔物のように聳(そび)え立っていたのだ。

「アローガント大聖堂」と書かれた銅製の看板がものものしい門にがっちりとはめ込まれていた。
2本の角のような大きな尖塔に、らんらんと光る目玉のようなステンドグラス。怪物の歯を思わせるぎざぎざの門扉もなんだか不気味な印象だ。
これが本当に神を称えている場所なのだろうか。
「ここ、ほんとに聖堂なんですか?」
イナホが素直な感想を言う。
「こんなところにユンタさん、何か用でもあるのですか?」
ビースが訊くとユタは肩をすくめてみせた。
「まさか。俺がここに皆を連れてきたのは比較させたかっただけさ。俺が本当に用があるのは…」
ユタが回れ右をして帰ろうとしたとたんに、怪物の口―門扉がギーッと嫌な音とともに開いた。
口の中からでてきたのは三人の人間だった。
やせて背の高い若い男と、それと全く対照的な背の低い太った老人。そして――
「ヴァルツ!?」
シュトラウルは思わず駆け寄った。
「なんだね、君は!?」
横の老人が言うのも聞かずに、シュトラウルはヴァルツと向かい合った。
「お前、なんでこんなとこにいるんだよ?」
「貴方には関係ないでしょう」
「関係ある。僕はお前の兄だ」
相変わらず氷のように冷たいヴァルツの瞳にさっと怒りの色が宿った。
「そういう言い方は嫌いだと前にも言いましたよね?貴方は貴方で、私は私なんです。つながりなんてありはしませんよ」
「お前、まだそんなこと…!」
「まあまあ、こんなところに来てまで兄弟喧嘩をしなくても良いでしょう」
若い男が二人の間に入って、仲介をした。
「ここは神のお膝元なのですよ。お二人とも静粛にね」
口調は丁寧で顔もにっこりと微笑んでいたが、それでも若い男は雰囲気でシュトラウルたちを圧制していた。
一瞬場が静まって、風がひゅうっと遠慮がちに吹いた。
だがその静けさを破ったのは他でもない、さっきの老人だった。
「おおー、これはこれはユンタ殿ではありませんか!いったいどうされたのです!いやいや、そんなことは関係ない。また我が聖堂に来ていただいたこと光栄に思いますぞ!」
相手をしながらもユタは心底嫌そうな顔をしていたが、それに気づいていたのは老人以外のものだった。

【つづく】

↓小説面白いなーと思ったらクリックお願いします
*人気ブログランキング*

しゃちほこ | 小説「人形たちの交響曲」 | 16:48 | comments(8) | -

2007.02.04 Sunday

スポンサーサイト

スポンサードリンク | - | 16:48 | - | -

コメント

 こんにちは^^。なんだか久しぶりにリヴをしました(笑)。
 宗教都市、との事で少しワクワクしています(笑)。確かに実際の宗教都市も、あまり生活観は無いですよね。皆ひたすら祈っている、という感じでどこか冷たい・・・それは私が日本人だからかな^^;
 謎の老人、気になるところです。ヴァルツ君も道を踏み外してしまいそうでヒヤヒヤさせられますなぁ(笑)。

陽 | 2006/11/04 4:56 PM

こんにちは。わ…!更新されてる…!
早速読ませて頂きました!!

宗教都市…!綺麗な雰囲気漂ってますよ!聖者神天使!(ぇ)有難うございます(?)
確かに、生活感はそんなになさそうですね;陽様の言う通り、毎日祈ってばかりな気がします^^;
そして久しぶりにヴァルツくんが…!
シュトラウルくんの目がメラメラ炎ならヴァルツくんはキンキラキンな氷の目!(は?)
早く和解して貰いたいですが、それはもう随分先のことですよねぇ…。

しゃちほこ様の書く小説を読むとスッキリします、なんだか。
すごいなぁ…羨ましいです。

後2つもUPされるのですか!うわぁ楽しみにしてますよ!
頑張って下さいませ!!

それでは毎回毎回幼稚な文章失礼しました;;

小瓶 | 2006/11/04 6:00 PM

こんばんは。久々にコメントを残させて頂きました、nashです。
覗きには来ていたのですが、なかなかとコメントを残す機会がありませんでした。スミマセン;;

久しぶりにヴァルツ君が出て参りましたね。しかも敵対心丸出し!!
今後この兄弟がどうなっていくのか気になるところですね。

宗教都市という舞台も面白いですよね。
綺麗なんだけど生活感が無いという発想が凄く良かったです^^

nash | 2006/11/04 10:21 PM

ヴァルツ君…まさかこんな所で再会する事になろうとは…!!
シュトラウル君達がキルヒェドムに来る随分前からここに居たんでしょうか。
何だか、彼の雰囲気とこの町の雰囲気、嫌に似通っていますね…。
兄弟の確執は長引きそうですね。
速く仲直りしてくれないかなぁ…。

行雲 | 2006/11/05 9:41 AM

>陽さん

>確かに実際の宗教都市も、あまり生活観は無いですよね
この宗教都市はドラクエ爾里箸△訃貊蠅鬟皀妊襪砲靴峠颪い討い襪鵑任垢茖
そこの場所には立派な大聖堂があって、空も広くてとっても綺麗なんですが、民家が一軒も無いのです;
なので、「宗教都市や聖地っていうのは、神聖さを表すためにわざとそういった生活感を排除しているのかもしれないなー」と思い、小説の参考にさせていただきました。

>謎の老人
今回登場人物紹介に入れ忘れたのは、この老人と若い男性、それにヴァルツです^^;
全員完全オリジナルキャラなので、リヴモ様優先に書いていたらすっかり忘れてしまいましたorz
ヴァルツは以前に紹介したからいいかなーとも思いましたが、久々の登場なので載せたほうがいいですよね;
失礼しました〜;

しゃちほこ | 2006/11/06 1:14 PM

>小瓶さん

>ヴァルツ
正直「こいつのこと皆様覚えていられるだろうか…」とびくつきながら登場させました^^;
小瓶さんの言うとおり、シュトラウルのほうは瞳が赤っぽい茶色、ヴァルツのほうは銀っぽい灰色という設定にしています。
お互いの性格を反映させての色なんですよw

>しゃちほこ様の書く小説を読むとスッキリします、なんだか
瑤Δ蓮△△蠅とうございますw
小瓶さんたち読者のおかげで成り立っている小説なので、嬉しいです^^*

>後2つもUPされるのですか
4日→短編・長編ともに書いている最中にフリーズして消失
5日→短編・長編ともにJUGEMのサーバーの不具合により消失

…orz
ここまでくると泣けてきます;;
今日こそ三度目の正直で頑張りたいです;


しゃちほこ | 2006/11/06 1:23 PM

>nashさん

>覗きには来ていたのですが、なかなかとコメントを残す機会がありませんでした
いえいえ、お忙しい中覗いてくださるだけでも嬉しいですよw
それにnashさんはハーボットのルドがちゃんと「今日知ってる人来た」と教えてくれますので、読みに来てくださっているんだーと感激してたりしましたのでw

>ヴァルツ
>しかも敵対心丸出し!!
まあ当然のことながら、ヴァルツはこの章では完璧に敵です^^;
でも少しずつ兄弟仲を進展させていくので、見守ってやっててください^^

>綺麗なんだけど生活感が無いという発想が凄く良かったです^^
nashさんに褒めていただけるなんて、私の文章能力も少し上がったと思ってよいのでしょうかw(ぁ
陽さんへのコメント返信のとおり、インスピを得たのはドラクエなのでドラクエの堀井さんが素晴らしいだけかもしれませんが;
ありがとうございますw

しゃちほこ | 2006/11/06 1:31 PM

>行雲さん

>シュトラウル君達がキルヒェドムに来る随分前からここに居たんでしょうか
後ほど謎の若い男が話す予定ですが、ヴァルツはシュトラウルたちより少し遅めに首都を出発しましたので、到着したのはだいたい同じくらいです。
それでもヴァルツのほうが若干早めにアローガント大聖堂に着いたのですが;

>何だか、彼の雰囲気とこの町の雰囲気、嫌に似通っていますね…
相変わらず行雲さんは鋭いですね;
第4章が進むに連れて、ヴァルツとキルヒェドムが重なって見えるようになるはずです。(てか見えるようにしたいです;)

しゃちほこ | 2006/11/06 1:38 PM

コメントを書く